武藤手帖

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さけるチーズ

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子供の頃、小学校高学年くらいのころ

よく友達が「さけるチーズが好き!ハマっている!」と言っていた。

しかも1人じゃない。必ず何人かはそういう。

 

私の家ではさけるチーズを買う文化がなかったので、家の中でさけるチーズを見たことは1度もなかった。

そして、友達からその名を聞くまで私はさけるチーズを知らなかった。

「あの割いていく感覚が好きなんだよねー」

「お弁当にいつも入ってるよー」

「私は割かずにそのまま食べるのも好き!」

 

その感覚が私には分からなくてものすごく羨ましかったことを覚えている。

 

そしてさけるチーズを買うことがないまま中学生になり高校生になり、そして大学生になって20歳をこえてしまった。

 

さけるチーズはスーパーで売っていて、スーパーで買い物をするのは料理の材料を買う時、そして料理は母が用意してくれるので私はスーパーに行く必要性がない=さけるチーズを買いに行く権利が無い

 

当時はこのような方程式が本気で頭の中にあって、羨ましい羨ましいと思うだけで私は買いに行けなかった。

そして可愛くない子供だった私はどうしても母の作るお弁当が苦手で、中学生になる少し前くらいから自分で稚拙なお弁当を作って学校に持っていっていた。

クラスメイトの色とりどりに飾ったお弁当が羨ましくて仕方なかった。私の母は不器用だった。

自分の我が儘で母のお弁当を拒んだのに、私は「お弁当にさけるチーズをいれてくれるお母さん」に憧れていたのだ。

 

今となってやっと、深夜のバイト帰りに寄ったコンビニで缶ビールとさけるチーズを買ったりする。

さけるチーズ スモーク味とか。

ビールと一緒に食べてみたりもするけど、感動があるわけじゃない。美味しいと思うかと言われると微妙。 

 

だけど私にとってあれは秘密の、憧れの味

今も正直割く感覚が好きか、とかあの子達が言っていた意味が分かったわけではないけど

さけるチーズを買えるという謎の快感がこんな夜中に私を喜ばせている。